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  • シラセ アキ

短編:井の中

そこは暗闇の中だった。

目覚めた僕は君を探した。


何も見えない。

温もりを求めた手は空を切り、虚しく彷徨う。


ここはどこだろう、君はどこだろう。


漠然とした不安だけがつのる。

ふわふわと目眩がした。


不安をかき消すように、地面を踏みしめると真っ暗な世界に平衡感覚が戻ってくる。

いっぽ。また一歩。足を運ぶとかすかに手の輪郭が浮き出た。


深夜、灯りの無い一人部屋。ふと目を覚ますと、月明かりがカーテンを透かして部屋をぼんやり映し出した。

そんな明るさになった。


目が僕自身をくっきり映し出す。

それでもここには地面の他に何も無かった。

君もいない。


手の先から心臓へ。血液のすべてが冷えていく。そんな感覚が脳みそまでも支配していく。

不安。焦燥。恐怖。畏れ。


「どうしたらいいの?」


絞り出した声は震えていた。

応えの無い問いかけだけを心の頼りに目的もない歩みを進める。


まだ希望も絶望も見えないまま。

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